軽貨物運送事業を始めるにあたり、「黒ナンバーの取得」と「税務署への開業届」のどちらを先に行うべきか、迷われる方は少なくありません。特に、副業としてフードデリバリーや宅配事業を始める場合、「開業届を出していないけど黒ナンバーは取れるの?」という質問をいただきます。本ページでは、黒ナンバーの取得と開業届の関係を、順序・メリットの観点から解説します。
黒ナンバーの取得に開業届は不要
結論から言えば、開業届を提出していなくても黒ナンバーは取得できます。黒ナンバーの届出においては、開業届の提出は要件に含まれていないためです。つまり、税務署への開業届を出していなくても、車両や必要書類がそろっていれば黒ナンバーの取得は可能です。
開業届を提出することで得られる3つのメリット
開業届は新たに事業を開始したとき、事業用の事務所・事業所を新設、増設、移転したときに税務署に提出する書類です。黒ナンバーを取得して軽貨物事業を始める際、税務署に提出する個人事業の開廃業等届出書は、義務ではないものの、以下のようなメリットがあります。
青色申告により、最大65万円の特別控除が受けられる
開業届と併せて「所得税の青色申告承認申請書」を所轄税務署に提出すれば、事業所得について最大65万円の控除を受ける条件を整えることができます。この控除が実現すれば、課税対象の所得を65万円減らせるため、所得税・住民税・個人事業税などで節税効果を受けることができます。
事業用口座の開設・屋号の活用がスムーズ
開業届には屋号を記載でき、提出控えを保有しておくことで、銀行口座を屋号付き名義で開設したり、融資・補助金申請時の証明書類として使えたりします。これにより、開業準備や資金調達の用意がスムーズに進むメリットがあります。
白色申告では得られない税務上の優遇・損失繰越などの活用が可能
青色申告を選択すれば、赤字を最大3年間繰り越すことなどが可能となり、初期投資や設備費がかかった年度でも税務的なロスを抑えやすくなります。
提出期限は、事業の開始等の事実があった日から1月以内とされます。開業届を提出しなくても罰則はありませんので、実務上は提出遅れが多く見受けられます。黒ナンバーを取得して継続的に配送業務を行う場合は、開業届も併せて提出しておくことをおすすめします。
提出の順序はどちらが先でも問題なし
黒ナンバーの届出と開業届の提出は、いずれも個人で貨物運送業を営む際に関わる手続きですが、根拠法令と目的を異にする独立した制度です。したがって、原則としてどちらを先に行っても支障はありません。
開業届は、所得税法第229条等に基づく税務上の届出であり、事業開始の日から1か月以内の提出が求められます。一方で、黒ナンバーの届出は貨物自動車運送事業法に基づく手続きであり、その要件として開業届の提出は含まれていません。すなわち、開業届を提出していなくても黒ナンバーを取得することは可能です。
実務上、どちらの手続きを先に行うかについて明確な法的順序は定められていません。一般的には、車両や任意保険など運送業務の準備が整い次第、黒ナンバーの届出を先行させるケースが多い一方で、屋号付き口座の開設や融資申請を予定している場合には、開業届を先に提出し、控えを取得しておく方が後の手続きが円滑になります。
いずれにせよ、個人事業主として貨物運送業を営む場合には、いずれの届出も適正に行うことが重要です。特に、黒ナンバーの届出は貨物軽自動車運送事業法に基づく法的義務であり、開業届とは異なり、提出を怠ると事業を開始できません。事業開始時の段階で、どちらの書類も確実に整備しておくことが望まれます。
まとめ
黒ナンバー(貨物軽自動車運送事業の届出)と開業届(税務署への届出)は、根拠法令・目的の異なる独立した手続きです。
そのため、原則としてどちらを先に行っても差し支えありません。
実務上は、車両や保険の準備が整った段階で黒ナンバーの届出を行い、事業開始に合わせて開業届を提出するケースが一般的です。長期的な事業運営を見据え、税務面でも有利になるよう開業届の提出を早めに行うことを推奨いたします。
黒ナンバーの取得手続きはお任せください
当事務所では、貨物軽自動車運送事業の届出から軽自動車協会での黒ナンバー受取まで、一連の手続きをトータルサポートしております。「開業届をいつ出せばよいか分からない」「副業で始めたい」という方にも、行政書士が状況に合わせてご案内いたします。
黒ナンバーの取得や開業に関するご相談は、どうぞ当事務所にお任せください。
ご相談・ご依頼は、下記フォームよりお気軽にご連絡ください。
